あみのめ「記憶線」


あみのめの7年ぶりのアルバム「記憶線」

2014年のベストを選ぶとしたら、このアルバムをおいて他にはない。

2014年はそれまで音楽を聴くことにあてていた時間をほかのことにとられて、保守的、というか相当に自らを回顧する(10年以上前によく聴いていた)音楽に偏った聴き方になってしまった。
(何を聴いても新鮮に受け取ることができなくて、結果、アーカイブに寄っていってしまうことが数年に一度ある)

2014年は、偶然にも長くファンをやっているアーティストの新譜がたくさん出た。倉地久美夫(7年ぶり)、山本精一(オリジナル歌ものは3年ぶり)、渚にて(6年ぶり)、FLOWER FLOWER(YUIの前作から3年ぶり)、そして、あみのめも7年ぶりにアルバムを発表した。

「とわのむこう」が正式に初めて世に出たのがうれしい。Doodlesがまだ4人編成だった頃から演奏されている、とても思い入れの深い曲で、初めて聴いたのは2002年4月、高円寺20000Vでだった。以降、3人→2人となったDoodles→あみのめとライブレパートリーからはずれることなく演奏され続け、僕の手元には少なくとも8バージョンライブ録音があるのだけど、その「とわのむこう」がようやく発表された。(万華鏡ミックス)という衝撃的なアレンジバージョンで!

ずっと思っていることのひとつに 利光暁子(寺島暁子)の歌詞の良さがある。一人称で描かれる物語の一場面や心象風景を浮かびあがらせ、聴き手ひとりひとりが異なる像を重ねられるのだけど、それが平易な言葉でつづられているところが素晴らしいと思うし、好きだ。

「とわのむこう」の歌詞の下記箇所はずっと好きで、でもやはりその時どきで、思い描く像は異なってきたと思う。2014年の今も、やっぱり、今思いをはせることがある。(これからも)

こんなにもあたたかく こんなにもとめどなく
こんなにもいとおしいことが
目の前でかたちを変えて そこから何か 息づく
それを僕は それを僕はうたうから とわのむこう 声を上げる

2013年10月に初めての子を授かり、2014年は幼い子と触れ合いながらの生活となった。そのためか、自分の記憶をたどる機会の多い1年だったと思う。30代後半になると、自分自身の価値観も過去の比重が大きくなってきた気がする。

最初、その題「記憶線」という言葉の耳慣れなさに首をかしげたが、終曲「未来行き急行」とジャケット写真からようやく解題した。久しく東京でライブ活動にほぼ終始していたあみのめが2014年の夏に、新曲とアルバム発売の発表とともに、11月のライブを最後に産休に入る、との告知がなされた。

そっと覗きこむ レンズの中に 滑り込んできた 未来行き急行
記憶の中からやってきたんだ 軋んだレールは空を渡る

「未来行き急行」は2014年もっとも繰り返し聴いた曲になった。


「記憶線」全曲ダイジェスト
info: http://aminome-japan.tumblr.com/post/98825282200